カイゴのシゴト

私の名前が呼ばれることに介護士のやりがいを感じます。

投稿日:2017年4月29日 更新日:

名前を呼ぶ人

長い間正社員として勤めた介護施設を辞めて、数年が経ちました。

今も副業で介護士として働くのは、あの頃のように私の名前を呼んでくれる人がいる場所を、今度はまた違った場所で築きたいからかもしれません。

 

名前を呼ばれることがただ嬉しい。

新しい職員、ムラタさんが入り、初めて同じ勤務になった日の出来事。

様子をうかがっていたら、向こうのほうから話しかけてくれました。

「ワイ(私)さんて、きのこの里で働いてました?」

「娘が私の勤務表を見て、ワイさんってきのこの里で働いてた人じゃない?って言うんです。」

「私の娘が、たけのこの森でヘルパーをしていて、利用者のシモカワさん(仮)がワイさんのことをよく話してたから同じ人だと思うって。」

シモカワさんが私の名前を呼んでくれていたのを知って嬉しかった。

悪口だったかもしれないけど…

嬉しかった。

 

自分を必要としてくれる人がいる喜び

新入職員のムラタさんとその話をする数か月前に、前の職場の上司と久しぶりに会っていました。

会うといつもこっそり利用者の近況を教えてくれます。

「Aさんが亡くなった。」「Bさんが入院している。」「Cさんが別の施設に移った。」

そして、ちょうどその時にも、シモカワさんの話をしていたんです。

「シモカワさんは入院して気管切開することになり、退院後はうちの施設の利用はできなくなったんだ。」(前の職場は医療行為が必要な人は入所できない介護施設でした。)

シモカワさんは、年齢が私より一回りくらい上の男性で、障害認定される難病を患っていました。

進行性の病気で、だんだんと四肢が思うように動かせなくなってしまう重い病気。

発症時に、奥さんと子供がいたけれど、子供に病状が悪化していく姿を見せないようにしようという理由で離婚していました。人伝いに離婚に至るまでの経緯を聞いて私は切なくなったけれど、本人はいつもふざけていて、悲しい別れをしているような人には見えませんでした。

病気のせいでうまく話せず、彼が何を言っているのか、はじめはさっぱりわかりませんでした。

隣に座ると何やらたくさん話しかけてくれて、聞いているうちに少しずつ聞ききとれるようになっていきました。

「オンナノコ ショウカイ シテ・・・」彼はとてもくだらないことを話していました。

話しにくいにも関わらず、頑張って話すのがそんな内容ばかり。こんなくだらない話を頑張って聞き取ろうとしていたのかと思い、バカらしくなりました。

このくだらない会話は、いつも決まって私の名前を呼ぶところからはじまっていたんです。

私の苗字の2文字だけ。あだ名で呼ばれていました。

「(手招きしながら)ワイ~」

名前を呼ばれて、私が彼の隣りの空いた席に腰掛ける。

「カノジョ サンニン イル。」

すると彼は嬉しそうくだらない話をしはじめ、私はそのくだらない話をなんとか聞き取りながらウンウン頷く毎日。

弱気な話はしないし、くだらないことばかり言っていましたが、目の奥が優しい人でした。

彼の纏う空気に、介護士の私が和まされていました。

そのシモカワさんが、気管切開することになってしまった。

気管切開してしまうと声が出せなくなります。

もう彼の口から私の名前が呼ばれることはないんだなって、元上司の話を聞きながら思った瞬間に寂しさが込み上げてきました。

そのときに私は、「人に名前を呼ばれることは自分がこの世に居る理由になる」んだってことを知ったんです。

 

※本文に登場する事業所名・人物名は架空の名前です。

 

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